2014年5月10日土曜日

そしてその時になって私たちはサン=テグジュペリが、「愛というのは、互いに相手の顔を眺め合っていることなのではなくて(―これは一つの完璧な日の出がもう一つの完璧な日の出を眺めることに相当する。―)、同じ方向に二人で一緒に眼を向けることなのである」と言ったのが本当であることを理解する。妻も夫も、一緒に同じ方向を眺めているだけではなしに、外に向かって一緒に働き掛けているのであり(牡蠣が岩の上に次第に繁殖していく有様を見るといい)、そうすることで他の人間との繋がりもできるし、また社会にしっかり根を降ろすことになって(牡蠣を岩から剥がすのは大変な仕事である)、それで二人は本格的に人間の社会の一部をなすに至る。(アン・モロウ・リンドバーグ著、 吉田健一訳 『海からの贈物』 新潮文庫 2004年 p.80−81)

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