2013年7月14日日曜日

絶好調のときこそ「勢不可使尽」

自分でも信じられないほど絶好調のときを迎えることがある。何ごとも順調にすすみ、予想以上の成果が得られる。絶好調の人は、こういう時期が長く続くことを願っているのだろう。

絶好調は、実は破局への種がまかれている時期でもある。人間は、不調のときに不調が始まるのではない。絶好調のときに不調の扉が開かれるのである。だから、絶好調を迎えたら、調子に乗りすぎないで、やや控えめに行動することが良さそうである。

中国宗代の禅の高僧である仏果(ぶっか)禅師は、『碧巌録(へきがんろく)』の中で「勢不可使尽」という考え方のたいせつさを説いている。

仏果禅師は「勢不可使尽」(勢い、もし使い尽くさば、禍、必ず至る)と述べています。人間は調子に乗りやすい。しかも、このときに大きな失敗に至る種が芽を出し始める。絶好調は大失敗への出発点、くらいに考えて、調子に乗りすぎないことがたいせつだ、と仏果禅師は教えている。

スポーツでは「バーンアウト(燃え尽き症候群)」といって、予想外のすばらしい成績を出したとたんに意欲が失われて、競技から遠ざかる選手がいる。まさに「勢い、使い尽くすべからず」ができなかったときの状態を証明しているような気がする。

(参考文献)
松原泰堂『禅語百選 今日に生きる人間への啓示』(祥伝社、1983年)

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