2013年7月25日木曜日

十種競技は人間の特性を生かしたスポーツ競技

人間が地球上で最高の運動能力を持っているのではない。動物の中には、人間をはるかに上回る身体能力の持ち主たちがいる。

地上最速の動物であるチータは、時速110キロ以上で走るといわれている。ス中を高速度で泳ぐバショウカジキの泳速度は時速100キロ以上である。

では人間が走ったり泳いだりするときの最高速度はどれくらいであろう。

まず、走速度からみてみよう。世界最速のウサイン・ボルト選手がトップスピードで走っているとき、時速44キロに達する。この速度はチータの4割ほどである。

泳ぐスピードはどうであろうか。競泳のセザル・シエロ・フィーリョ選手は50メートルを2091で泳いだ。この速度は時速8.6キロで、バショウカジキの1割にも満たない。

走るスピードも泳ぐスピードも、人間は動物に勝てない。では、ジャンプ力はどうであろうか。

脚力だけでもっとも高く跳んだのは、バスケットボールのデイヴィッド・トンプソン選手である。ギネスブック入りした垂直跳びの記録は122センチであった。これは身長の0.63倍の高さである。ところが、ノミは身長の9倍の高さを跳ぶ。ジャンプ力も人間が優れているとはいえない。

じゃあ人間の身体能力は総て劣っているのか、というとそうではない。走る、跳ぶ、投げる、泳ぐといったさまざまな身体能力を総合的に発揮できるのは、動物界で人間だけである。人間は総合的身体能力に優れ、ほかの動物は特化された身体能力だけが優れているのである。

走・跳・投を競い合う男子十種競技と女子七種競技は、まさに人間だけに与えられた総合的身体能力を競い合うスポーツだといえる。

2013年7月14日日曜日

フォロースルーはたいせつ

野球の投手は、ボールが手から離れたあとも腕を振り抜く。この動作を「フォロースルー」という。フォロースルーは、テニスのサーブでもサッカーのキックでも行われる。

速いボールを投げるためには腕を高速度で振り抜かなければならない。高速度で動く腕は勢いが大きいために、肩のまわりの筋肉に過度な負担をかけることがある。ときには肩の障害を起こす。こういった障害を防ぐには、腕を振り抜くとき伸ばされる肩関節のうしろ側の筋肉を収縮させて、腕を減速させることが必要となる。フォロースルーは、このような減速をおこして障害を予防するための重要な時間だといえる。

もちろん、急な減速も障害の原因となる。腕に大きな加速を与え、しかも障害防止のために適度に減速する技術が必要である。そのためには、どのような練習をすればよいのか。いかなるトレーニングがよいのか。いつか、その答えを見つけたい。

絶好調のときこそ「勢不可使尽」

自分でも信じられないほど絶好調のときを迎えることがある。何ごとも順調にすすみ、予想以上の成果が得られる。絶好調の人は、こういう時期が長く続くことを願っているのだろう。

絶好調は、実は破局への種がまかれている時期でもある。人間は、不調のときに不調が始まるのではない。絶好調のときに不調の扉が開かれるのである。だから、絶好調を迎えたら、調子に乗りすぎないで、やや控えめに行動することが良さそうである。

中国宗代の禅の高僧である仏果(ぶっか)禅師は、『碧巌録(へきがんろく)』の中で「勢不可使尽」という考え方のたいせつさを説いている。

仏果禅師は「勢不可使尽」(勢い、もし使い尽くさば、禍、必ず至る)と述べています。人間は調子に乗りやすい。しかも、このときに大きな失敗に至る種が芽を出し始める。絶好調は大失敗への出発点、くらいに考えて、調子に乗りすぎないことがたいせつだ、と仏果禅師は教えている。

スポーツでは「バーンアウト(燃え尽き症候群)」といって、予想外のすばらしい成績を出したとたんに意欲が失われて、競技から遠ざかる選手がいる。まさに「勢い、使い尽くすべからず」ができなかったときの状態を証明しているような気がする。

(参考文献)
松原泰堂『禅語百選 今日に生きる人間への啓示』(祥伝社、1983年)

2013年7月11日木曜日

競技スポーツには練習パートナーという脇役が必要

名脇役がいるから主人公が輝くのである。スポーツでも同じである。名選手の陰には、常に優れた練習パートナーという脇役が存在している。

スポーツ選手は、一人だけで強くなることは不可能に近い。競技力を高めるには、その選手の才能を引き出さなければならない。才能を引き出すとき、練習パートナーが大いに貢献することになる。

優れた練習パートナーは、主人公である選手が知らぬ間に才能を引き出させるように仕向けることができる。たとえば、テニスの練習パートナーは主人公がかろうじて打ち返すことができるコースにボールを打ち込んだり、苦手なコースにボールを打つことで、主人公の選手の隠された能力を引き出させる。

これまでコーチ、トレーナーなどが重視されて来たが、これからは練習パートナーの役割もより重要になるような気がする。