スポーツという運動刺激は、人間の心身に影響を及ぼす。その影響は、一過性のものから長期にわたるものまである。
運動すると、心拍数や血圧などが上昇してくる。しかし、こういった上昇は運動が終わると短時間で安静値にもどる。このような影響は“一過性”といえる。
運動を継続すると、筋力や持久力などの体力が向上し、トレーニングを継続すればその効果は持続する。こういった影響を“短期性”とよぼう。
ある程度の期間にわたってトレーニングを継続すると、その影響が生涯にわたることがある。このような影響を“中期性”とよぶことにする。
そしてもう1つ考えておかなければならない影響は“長期性”のものである。ある人が長年にわたってトレーニングを継続した影響が子孫に及ぶというものである。
スポーツという運動刺激が人体の心身に及ぼす効果を考えるとき、“一過性”、“短期性”、“中期性”、“長期性”の4つの側面を考慮する必要があると思う。
1964年の東京オリンピック開催時に、国際スポーツ医学連盟(FIMS)は国際オリンピック委員会(IOC)と各国オリンピック委員会(NOC)に呼びかけをした。
その内容は、各国の東京オリンピック参加選手を4年に1度、生涯にわたって体力などの追跡調査する研究を行なう、というものであった。この提案は、Olympic Medical Archives(OMA)とよばれ、開催国の日本をはじめ23カ国が参加した。おそらく、世界で初めての国際的なスポーツ科学の研究プロジェクトであった。しかし、このプロジェクトに参加する国は激減し、ミュンヘンオリンピックで中止された。
日本は、その後も、4年に1度の頻度で追跡研究を継続し、トップアスリートの体力の加齢推移を知る手がかりが明らかにされるようになった。これに関する報告は、「東京オリンピック記念体力測定」をキーワードとして検索すると関係文献を見つけることができる。
スポーツを通して心身の健康づくりを考えるとき、得てして“一過性”から“短期性”までの影響力だけで判断することが多い。しかし、スポーツという運動刺激が人体の健康に貢献する方法などを考えるときには、“中期性”から“長期性”の影響力について調査研究することが必要だと痛感する。
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